Kindle作家九頭龍一鬼(くずりゅうかずき)の人生と意見

自著の紹介やそのほかいろいろをおとどけする予定です。

新人賞の不都合な真実③~量子論から見る『なぜプロは凡人ばかりなのか』

 量子脳理論などの特殊な場合をのぞけば、脳内の神経伝達物質の発火をふくめ、すべての物理現象は、素粒子全軆における波動関数の聚斂できまる。
 膜宇宙の分岐は、ディラック方程式における〈ブラ|ケット〉記法によって、〈ブラ|ベクトルと|ケット〉ベクトルの総和として計算される。
 完全に純粋な量子論的効果があらわれれば、すべての現象は50:50の確率で発生することになる。
 実際には、量子ゼノン効果といって、観測しつづけると一定のベクトルに波動関数が聚斂するので、幾許かは確率が偏頗する。

 わかりやすく説明するため、語弊をおそれずに、あえてアマチュア作家の才能を100段階で評価しよう。
 才能0の無能者より、才能100の天才のほうが新人賞を受賞する可能性はたかいとおもわれるかもしれない。
 実際には、前述のディラック方程式の解により、純粋な計算において双方の受賞確率は50:50で同等である。
 ゆゑに、期待値を計算すると、――才能の数値化は偏差をなさないとすれば――才能50におちつくので、新人賞受賞者のレベルは『運命的に凡人だらけ』となる。

 無論、前述のとおり、量子レベルでの物理的現象には、量子ゼノン効果が惹起されるので、超マクロな系においては、複雑系における冪乗則が観測される。
 と雖も、『凡人ばかりが新人賞を受賞して、大物になり躬自らが新人を品隲するがわに聳立する』のならば、冪乗則は指数関数的に期待値50に聚斂してゆく。

 畢竟、アマチュアの世界には、超弩級の三文文士(たとえば某九頭龍のような)もいれば、超弩級の天才もいるのだが、プロの世界は『凡人だらけ』という物理的現実に驀進してゆく。

 翩翻として、大學の新聞小説からデビューした大江健三郎や、直截のもちこみでデビューした島田雅彦、編集部に手紙をおくってデビューした平野啓一郎、同人誌からデビューした西村賢太、(政治的には苦手な人物だが)原稿のもちこみからベストセラー作家になった百田尚樹などの場合は、新人賞にたよらない成功例として篆刻されるべきかもしれない。
 
 と雖も、結局、愚生は宝籤をあてるために、これからも新人賞への投稿生活をつづけるのである。